「孤独」という漢字を見ると、とても悲しく、独りぼっちのような感覚がしますね。
よくニュースでも、「独身や高齢者の孤独死」をトピックにしている記事を見ますが、どのような境遇であったとしても、ひとりはとても寂しい気持ちがします。もし誰かが孤独を感じ、引きこもっている現状があるとすれば、それは果てしない絶望と葛藤を抱えて生きている気がするのです。
生きながら死んでいる、という表現が正しいでしょうか。
なぜ孤独は毒と考えるのか、孤独から抜け出せる方法があるのかをここでは紹介していきます。
孤独感とはどういった感情なのか
ひとりでいても寂しい、恋人や家族と一緒に過ごしていてもどこかひとりぼっちのような気がする、という心の奥底にある普遍的なネガティブな感情です。
その深い心の奥底では、「自分がこの世にいても何の役にも立たない」「自分は誰にも愛されない害のある人間」といった個人の内面で感じる感情です。
また、幼少期の母親との濃厚な関係に戻りたい、といった願望が満たされないことから生じる喪失感や、昔の破壊的衝動が母親に投影されることで、自分には味方がいないという感覚を今も感じるようです。
そのような幼い頃の自我が今の自分と統合されていない未完了の感情となります。
寂しさという感情の起源は、生まれたての赤ちゃんがお母さんから少し離れた時の寂しい、悲しいという感情が脳のずっと奥深い記憶の中に残っている、その時の寂しい感情が今となってまで、記憶の中に残っている、と言われています。
人間の記憶って、すごいですね。
その先にあるものは?
そんな小さな悲しい感情の積み重ねではありますが、
このような感情の声を聞かず、放置しておくと、人は心身の健康を損ないます。
孤独感が健康にもたらすリスクはそこはかなく心身に影響を与えます。
身体的な健康被害としては、早期死亡リスク、認知症、アルツハイマー、うつ病、がん、糖尿病等を50%アップさせます。またアルコール中毒といった、毎日の飲酒から抜け出せない生活習慣病を招きます。お酒の力で辛い今を忘れようとした人も多いのではないかと思います。
また、ひとりで食事をする独身の死亡リスクも通常の1.2倍となっているようです。
孤独感が、死亡リスク、発病、脳活動でさえ影響があるということが明らかにされているなら、ちょっと怖いですね。
更に、脳活動の思考停止状態も考えられるので、社会的な喜びを感じにくく、他者への共感が低下し、ネガティブな情報に注意が向きやすくなります。
長生きしたいなら対策しよう!
昨今ではフリーランスのような自由な働き方をする人が増えています。
働き方は自由ですが、人と交流する働き方というのがとても大事となります。
人とリアルで会話し、仕事をすることで、自分は社会とつながり、役に立っているという喜びを深く内面で感じる、ことが心身の健康を左右します。
(仕事を「やらされている感」といった他人軸でいるなら、心が追われている状況です。そうであれば、「自分が役に立っている感」「仕事をしたい」と感じられるまで、休息しましょう。)
誘ってくれる友人達を大事にしましょう。可能である限り、人の集まりに出向きましょう。
自分からも声をかけることで、脳に「自分はひとりではない」という状態を認識させることができます。
人と交流し、アクティビティ活動に参加しましょう。ボランティアでも習い事でも良いのです。
人と良い人間関係を構築することが、長寿、幸福感、健康を維持することにつながります。
ひとりで過ごす時間はとても大事です。そこで学びを深め、自己理解を強化することで、他者への貢献が可能となります。ひとりでいる時は、マインドフルネス瞑想等、自分と向き合うための時間も必要です。
人とのつながりが自分を幸せにする
こういった孤独感はお金でも名声でも出世でも癒されません。
かつて私も若い頃は親から愛されず役に立たない人間なんだ、と思い込んでいましたが、どうもそうではないらしい。
そんな満たされない気持ちを救ってくれたのは周りにいる友人達だったと思います。
ちょっとした人の声掛けやメッセージが自分の心を救ってくれるのは大きな勇気となります。
そして、自分が与えられた環境の中で幸せだと感じる力、だと思っています。
それができるなら簡単だ、と思うのでしょうが、できないのであれば、できないと思い、人を頼り、勇気や元気を与えてもらい、そこから立ち直ることのできる自分の力を信じる、に尽きます。
ひとりで飲むお酒も美味しいけど、誰かと共にする食事やお酒はさらに美味しい。誰かもあなたとそのような時間を共有することで、楽しい時間を過ごしたいと思う人がいる。
誰かがあなたを必要としていると思えれば、案外、強く前を見て進むことができるのではないでしょうか。
そういった人と人との交流を通して感じる温かい気持ちこそ、「つながり」であり、遠い記憶の寂しい感情から抜け出せる唯一の解決策であったりするのです。
<参考> フランクルの孤独に関する価値観
ヴィクトール・フランクル(Viktor Frankl)は、孤独観を研究しているオーストリアの精神科医(心理学者)であり、「意味療法(ロゴセラピー)」の創始者です。
彼はホロコーストの悲惨な状況を生き抜き、その中での孤独、絶望、そして人間の存在意義について深く考察しました。
フランクルの価値観は、人生における「意味」の発見に重点を置き、困難な状況下においても生きる目的や意義を見つけ出すことができるという信念が特徴です。
また、彼の価値観のひとつとして、「人間は独立したひとつの「個」であり、孤独のあまり、誰かと心中しても心は救われない、「個」と「個」は融合されず、また別々のものである」と唱えています。
孤独を通じて自分と向き合う
- フランクルは、極限状態での孤独や喪失感の中で、自己と向き合う時間こそが人間の本質を知る鍵だと考えました。彼の体験によれば、外部からのサポートが得られない場合にこそ、自分自身が自らの人生に意味を見出す必要性が生まれるといいます。
苦しみと孤独が生きる意味を掘り下げる
- フランクルは、自らが収容所での極限状況において、苦しみが生きる意味を深めると信じていました。孤独な状況の中でも、人間は自分の生きる理由や、今自分がすべきことについて問いかけ、それに意味を見出す力を持つと考えました。この信念は、「人はどのような状況においても、自らの態度を選ぶ自由がある」という彼の名言にも表れています。
他者との繋がりに価値を見出す
- フランクルにとって、孤独の中でも他者を想うことや、他者のために生きることが、人間の存在価値を高めるものでした。彼は、自分の存在が他者の生活や幸福に寄与する可能性を見つけ出すことに生きる意義があると考え、そのために個人がどうすべきかを探求しました。
超越的な視点から孤独を捉える
- フランクルの「意味療法」では、孤独や苦しみはただ避けるべきものではなく、人間の存在意義を理解するための通過点であると捉えられます。彼は人生の意味を見出す方法として、孤独な状況でも、これらの価値に目を向けることで自己超越ができると考えました。
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